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Two women are collaborating in a modern office or educational setting. One woman, wearing a brown t-shirt and dark trousers, stands at a framed whiteboard and uses a purple marker to draw a diagram. The second woman, dressed in a bright red blouse, stands beside her, holding a tablet and observing the board with a focused expression. In the background, a large digital screen displays a slide related to the Nobel Prize in Physics. The room is well-lit, featuring neutral-toned walls and professional furniture that suggests a brainstorm or academic discussion.

ピープル アナリティクス:アンケート結果を​実行に​移す

Updated March 2026

はじめに

以前 Google では、​Google ツールバーの​青の​色合いを 42 種類用意し、​最も​クリックされる​確率が​高い色を​特定する​実験を​行いました。​「実験し、​ユーザーの​行動から​学び、​サービスを​改善する」と​いう​アプローチは Google の​製品開発や​ビジネス手法に​深く​根付いている​考え方です。​実際に Google 以外の​多くの​組織でも、​製品開発や​顧客エンゲージメント、​ひいては​ビジネスの​実践に​おいて​こうした​実験が​広く​使われています。​そして、​このような​データに​基づいた​アプローチを​人事の​問題に​適用しようと​いうのが​「ピープル アナリティクス」の​考え方です。

Google の​ピープル アナリティクス チームは、​人事に​関わる​すべての​意思決定に、​データに​基づく​情報を​提供する​ために​発足しました。​当初は​洗練された​予測アルゴリズムや​高度な​予測ツールなどは​なく、​解決すべき​人事の​問題と​組織の​コンテクストを​理解する​ことから​始めました。​今では、​幅広い​データや​指標を​作成、​運用するだけでなく、​仮説の​検証、​実験、​学術研究の​応用​可能性の​調査、​モデルの​構築、​科学の​応用などを​通じて、​Google 社員の​「働く」を​改善できるよう​支援しています。​これら​すべては、​データから​職場環境を​変革し、​明確な​効果に​つながる​実行可能な​戦略を​導き出すために​行われます。

適切な​疑問を​投げかける

いきなりデータや​指標の​選択に​取り掛かってはいけません。​まずは、​これまでに​組織や​業務に​ついて​感じていた​疑問を​振り返る​ことから​始めます。​そのうえで、​それらの​疑問に​対する​答えを​導き出すために、​どう​いう​データが​必要かを​検討します。​最初に​じっくり時間を​かけて、​何が​問題なのかを​明確に​定義しておく​ことが​重要です。​適切な​質問は​重要であり、​ビジネスの​戦略に​根ざしている​必要が​あります。​この​コンテキストが​ないと、​分析は​現実世界の​変革の​原動力ではなく、​純粋に​学術的な​ものにとどまってしまうリスクが​あります。

組織に​とって​最も​重要な​問題や​疑問を​定義するには​どうしたら​いいでしょうか。​まずは​企業や​組織に​とっての​緊急の​課題を​理解し、​それらの​課題を​解く​ためには​どのような​人事方​針、​人事制度が​最適かを​検討しましょう。​ピープル アナリティクスで​最も​的確な​答えが​得られる​課題を​理解する​ためには、​米国の​医療制度改善に​用いられるトリプルエイム​(3 つの​目標)の​フレームワークが​使えます。​トリプルエイムは、​以下の 3 つの​要素に​焦点を​当てています。

  1. 有効性。 人事プログラム、​方針、​プロセスは、​適切な​成果を​生み出していますか?​例えば、​採用プロセスに​ついて​言えば、​有効性を​向上させる​ことで、​長期的に​見てより​優秀な​人材を​採用できるようになるでしょう。
  2. 効率性。​より​短い​期間で、​あるいは​より​少ない​費用で、​同じ​成果を​達成できないでしょうか?​採用の​例で​言えば、​効率性を​高める​ことで、​採用一人​当たりの​コストを​削減できます。
  3. エクスペリエンス。​人事とは、​文字通り​「人」に​関わる​事柄です。​これらの​プログラムや​プロセスの、​個人の​エクスペリエンスを​改善する​ことは​できないでしょうか?​採用で​いえば、​候補者が​面接体験や​採用担当者との​やり取りを​どう​感じたかを​測定する​ことなどが​考えられます。

組織に​よっては、​有効性、​効率性、​エクスペリエンスと​いった​要素の​それぞれが、​他の​要素よりも​重要度が​高かったり、​低かったりするでしょう。​最良の​解決策は、​有効性、​効率性、​エクスペリエンスの​すべてを​同時に​改善する​ことです。​しかし、​これらの​要素間には​矛盾が​生じる​ことも​少なく​ありません。​それぞれの​要素が​他の​要素に​どのような​影響を​与えるか、​そして​望ましくない​影響を​最小限に​抑えるには​どうしたら​よいかを​常に​意識しておく​必要が​あります。

アナリティクスの​バリュー チェーンを​理解する

課題を​明確に​定義したら、​アナリティクスの​バリュー チェーン​(価値連鎖)を​使って​課題を​整理します。​アナリティクスの​バリュー チェーンとは、​分析の​プロセスを​バリュー チェーンと​して​捉えた​ものです。​チェーンを 1 段階上がる​たびに、​取り組みが​必要に​なりますが、​その​分付加価値も​高まります。​バリュー チェーンの​「意見」から​「情報に​基づく​対応策」まで​段階を​上がるには、​課題に​ついて​深く​考察し、​理解、​評価、​分析する​必要が​あります。

あらゆる​アイデアを、​それらを​裏付ける​データの​量が​どれぐらい​あるかに​よって​並べてみると、​データが​ない​もの​(つまり​「意見」)から​データから​導かれた​仮説までと​濃淡が​ある​ことに​気づきます。​データの​裏付けが​なければ​意見の​出し合いと​なるだけで、​自分の​意見を​通そうとする​方​向に​動きがちです。​Netscape の​元 CEO ジム バークスデールは​次のように​言っています。​「データが​あるなら​データを​見よう。​皆が​意見しか​持っていないなら、​私の​意見に​従おう」。

意見自体は​悪い​ものでは​ありません。​しかし、​意見を​裏付ける​データが​あれば、​対応策を​提案する​ときに​説得力の​ある​主張が​できます。​たとえば、​「社員に​よる​経費報告書の​作成に​時間が​かかっている」と​いうのは​単なる​意見です。​データの​裏付けが​ない​意見は​説得力が​なく、​あまり​有益な​ものでは​ありません。​データが​あれば、​「昨年 1 年間で​経費報告書の​作成に​100,000 時間かかっていた」と​説明できます。​まだ​対応策には​程遠い​ものですが、​単なる​意見より​ずっと​説得力が​あり、​解決策を​考えるうえで​価値ある​第一歩と​なります。

データが​あれば、​有用な​指標を​作成して​問題を​より​明確に​定義する​ことができるようになります。​データ分析を​通じて​解決策や​インサイトを​見いだせるかもしれません。​たった 1 つの​インサイトが​仮説の​根拠と​なり、​それを​検証する​ことで​課題の​解決に​つながる​可能性も​あるのです。

データと​指標を​選択する

分析しようと​決めたら、​必要な​データが​何かを​考える​前に、​つい​手元に​ある​データで​作業を​始めたくなる​ものです。​Google の​ピープル アナリティクス チームでは、​まず課題の​理解に​時間を​割く​ことから​始め、​その​解決の​ために​何を​評価すべきか選択するように​努めています。​適正な​データや​指標の​選択よりも、​適切な​質問を​投げかけ、​明確な​仮説を​立てる​ことが​重要です。

データと​指標は​どう​違うのでしょうか。​「四半期中の​採用人数」は​データです。​「四半期中の​すべての​新規採用に​かかった​費用」も​データです。​この 2 つを​組み合わせて​(後者を​前者で​割って)​算出できるのが、​「採用 1 人あたりの​費用」と​いう​指標です。​個別の​データよりも、​指標の​ほうが​情報価値は​高いと​いえます。​指標に​する​ことで、​時系列で​データを​分析したり、​グループ間で​比較したりして、​傾向や​パターンの​把握が​できます。

これらの​データや​指標には、​人事システムから​簡単に​算出可能な​場合も​ありますが、​能動的に​集めなければ​入手できない​データも​あるかもしれません。​たとえば、​社員の​やる​気、​感じている​こと、​信念などは、​本人に​聞いてみないと​わかりません。​Google の​場合は、​「Googlegeist」と​いう​社員アンケートを​毎年​実施し、​Google 社員が​上司、​チーム、​組織、​企業文化に​ついて​どう​感じているかを​調査しています。アンケートの​作成に​ついて​詳しくは​こちらを​ご覧ください。

統計に​基づいた​推論

データや​指標の​活用に​おいて​重要なのは、​それらから​推論を​導き出せるか​どうかです。​統計は、​データを​解釈し、​結論を​見極める​ための​有効な​手段です。​平均値の​算出から​回帰分析の t 検定まで、​統計の​理解が​不可欠です。​統計の​知識は、Khan Academy の​数学や​確率の​コースで​無料で​身に​付ける​ことができます。

統計は​強力な​ツールですが、​落とし穴が​ないわけでは​ありません。​カーネギーメロン大学の​統計学・​データサイエンス准教授である​アレックス レインハート氏は、​「Statistics Done Wrong」の​記事に​おいて、​(科学者にでさえ)​よく​ある​統計手法の​誤りを​指摘しています。​ここでは、​心に​留めて​おくべき落とし穴を 2 つ​紹介します。

  1. 相関関係=因果関係ではない​:2 つの​変数が相関している(た​とえば、​相互に​関連していて​同じ方​向へ​動く)ことがあります。​しかし、​相関しているからと​いって​因果関係が​あるとは​限りません。​ブログ​「Spurious Correlations」​(疑わしい​相関関係)に、​いく​つか例が​紹介されています。
  1. 平均への​回帰:​「平均への​回帰」とは、​たとえば​両親の​身長が​「非常に」高ければ、​その​子どもは​両親より​背が​低くなる​傾向が​あるなど、​時間とともに​平均に​近づく​傾向に​ある​(回帰する)​現象を​説明する​統計概念です。​改善したように​見える​場合​(た​とえば、​成績が​悪かった​選手が​新しい​チームに​移籍して​活躍する)と、​衰退したように​見える​場合​(た​とえば、​スター選手を​集めた​チームの​成績が​下降する)が​ありますが、​どちらも​ただ平均に​回帰しているだけです。

データから​ストーリーを​紡ぐ

動かしが​たい​事実や、​説得力の​ある​統計データの​裏付けが​あったとしても、​何らかの​アクションが​即座に​取れる​わけでは​ありません。​アクションは、​説得力の​ある​ストーリーから​生まれます。​データに​よる​裏付け、​オーディエンスに​あわせた​最適化、​そして​わかりやすい​説明が​必要なのです。

相手を​知る​: 説得する​相手一人​ひとりに​ついて、​何に​意気込みを​感じているか、​どのような​形で​情報を​伝えたら​受け入れて​もらいやすいかを​知っておく​ことが​重要です。​相手の​職務範囲に​関連する​データと​提案を​用意して​おきましょう​(た​とえば、​採用担当の​課長には​雇用データ、​福利厚生担当の​課長には​健康管理データなど)。​重要なのは、​最終の​発表まで​待つのではなく、​定期的な​チェックポイントを​設けて​関係者と​関わる​ことです。​そうする​ことで、​関係者は​プロセスを​理解し、​予期せぬ事態を​防ぎ、​結果に​基づいて​行動を​起こす​自信を​持つことができます。

短く​簡潔に​: 伝えたい​ことを 3 分以内で​説明できるよう​要約して​おきます。​以下のような​状況が​起きた​ときも​柔軟に​対応できます。

  1. いわゆる​クラシックな​エレベーターピッチ。​偶然居合わせた​上層部の​リーダーなどに​仕事の​状況を​簡潔に​説明しなければならないような​とき
  2. 意思決定者との​会議で、​持ち時間が​大幅に​短縮されてしまった​とき

ストーリーボード​(絵コンテ)​: 何も​書いていない​白紙を​用意します。​最初から​プレゼンテーション資料を​作ろうと​は​しないでください。​重要な​基本の​構成要素は、​データ分析の​文脈、​分析結果、​行動を​促すフレーズです。

水平方​向と​垂直方​向に​論理を​構成する​: ストーリーボードが​完成したら、​分析や​提案に​基づいて​プレゼンテーション資料を​作成します。​作成に​あたっては、​各スライドの​タイトルしか​読んで​もらえない​可能性を​考慮に​入れましょう。​聞き手の​説得を​要する​展開に​なって、​初めて​詳細を​読み始めると​いう​可能性さえ​あります。​重要なのは、​ストーリーの​論理が​水平方​向と​垂直方​向に​うまく​流れるように​する​ことです。

  • 水平方​向の​論理とは、​各スライドの​表題を​追うだけで、​文脈、​分析結果、​行動を​促すフレーズからなる​ストーリーを​理解できるように​する​ことです。​トピック間の​流れを​わかりやすく​する​必要が​あります。​各スライドの​表題を​箇条​書きに​して​エグゼクティブ サマリーを​作成し、​最も​重要な​ポイントを​表すアクティブな​題名を​付けましょう。
  • 垂直方​向の​論理とは、​各スライドの​表題を​補強する​すべての​情報です。​表題から​外れた​内容、​付け足し的な​内容、​重要でない​情報は​排除するよう​注意してください。​従来の​垂直方​向の​論理では、​スライドの​下部に​要点を​まとめ、​主題を​改めて​強調し、​締めくくりの​役割を​持たせます。

結果に​基づいて​アクションを​起こす

分析、​実験、​調査に​続く​最後の​ステップは、​それらの​結果に​基づいた​アクションの​実行です。​また​アクションプランは、​結果を​見てから​立てる​ほうが​効率的です。​ここでは、​インサイトや​結果に​基づいて​組織に​変化を​もたらす手順を​紹介します。

アクションプランの​基本事項を​決める

  • アクションプランの​実行責任者
  • 日程​(いつまでに​何を​すべきか)
  • アクションプランの​目標達成を​測る​指標​(例: 研修の​参加率 100%)
  • 関係者への​報告日程​(例: 毎月、​四半期ごと)
  • 社員に​結果を​知らせる​方​法

組織に​対して、​現状を​変える​提案を​すると、​何らかの​抵抗に​遭うことがあります。​プラン実行の​障壁に​なりそうな​問題は​前もって​特定し、​それらを​どう​克服するか​対策を​立てておく​ことを​おすすめします。

障壁となりそうな​問題の​例

  • 否定: 「今回の​結果は​たまたま​そうなっただけだ」
  • 分析まひ: 「もっと​データを​集めて​詳しく​分析しよう」
  • 変化への​抵抗: 「こんな​変化は​無理が​ある。​今の​ままで​十分に​機能している」

分析結果に​基づいて​対応策を​定義、​検討し、​実行に​移すまでの​各段階に​おいて、​組織内の​適切な​リーダーに​参加して​もらいます。​そう​すれば​アクションプランへの​支持も​得られるでしょう。​上記の​課題を​克服する​ために​先頭に​立って​働きかけてくれる​可能性も​あります。