マネージャーの経験を理解するための聞き取り調査

はじめに
こうした大規模な量的調査を補完するため、社内の質的調査も実施しています。私たちの質的調査では、通常、一部のマネージャーと直接対話することで、データの裏にある「理由」を深く探究します。変化の激しい業界において、このアプローチは深いインサイトを得るのに役立ち、より迅速で豊富な情報に基づいたプログラム調整ができます。
Google ラーニング アドバイザー: ケーススタディ
この問題を解決するため、チームは Google ラーニング アドバイザー プログラムを創設しました。これは、Google の学習と能力開発に関するプロダクト、プログラム、戦略に役立てるために、定期的に経験とフィードバックを共有する Google マネージャーの代表からなるグループです。グループに所属するマネージャーは、ボランティアとして、数週間ごとに Google マネージャーとしての経験に関するエピソード、視点、感情を引き出すための短いアクティビティに参加します。チームはそこで得られた豊富なインプットをまとめて、微妙なニュアンスを含む深いインサイトを導き出します。
また、ラーニング アドバイザーは、緊急性の高い質問に迅速に回答し、アイデアのテスト、反復、そして再テストができるよう、繰り返し迅速なフィードバックを行います。こうしたフィードバックは、従来の定量調査から得られるデータを補強するものです。そして、定性的調査と定量的調査を強く結びつけることで、マネージャーの体験に対する私たちの理解を一層深めてくれるのです。
Google ラーニング アドバイザーから得られた教訓
数年にわたり、Google ラーニング アドバイザー プログラムは、Google マネージャーが直面している課題、および彼らの姿勢、ニーズ、懸念に光を当て、貴重なインサイトをもたらしてきました。
たとえば、マネージャーと接するときは、信頼を伝え、パートナーとして「認められている」と感じさせるような態度が非常に重要であることが明らかになりました。このインサイトは、学習と能力開発に関するプログラムの名称から、社内スローガンやマネージャー向けコミュニケーションの設計まで、あらゆるものに影響を与えています。

キャプション: Google ラーニング アドバイザー プログラムから得られたインサイトに基づいて、社内のマネージャー コミュニケーション用に作成されたグラフィック。
また、計画的な活動と知見の統合は、Google School for Leaders にとってある認識を得る一助ともなりました。それは、マネージャーが自身の役割の曖昧な点の対応について、より多くの支援を求めているという認識です。マネージャー研修で学ぶシナリオでは、いわゆる「正しい」解決策と「間違った」解決策が明確に提示されますが、現実はそれほど単純ではありません。現在、Google ラーニング アドバイザーと一緒にマネージャー育成プログラムの実践演習シナリオをテストし、マネージャーが直面しうる微妙なニュアンスを反映できるよう取り組んでいます。
Google ラーニング アドバイザーから得られたもう一つの貴重な教訓は、マネージャーはさまざまな理由から現在の役職に就いており、その理由が各々のモチベーション、やりがい、課題に影響を与えていることを再認識できたことです。たとえば、パフォーマンスに関する社員との深刻な話し合いについてマネージャーの考えを調査したところ、厳しいフィードバックを与えることがチームメンバーの成長にとって必要と考えるマネージャーがいる一方で、マネージャーにはチームメンバーの気持ちを配慮する責任があると考えるマネージャーもいることがわかりました。Google School for Leaders は、さまざまなマネージャーがこのテーマにどのようにアプローチするかについての認識を通じて、難しい対話に関する幅広い視点とアプローチを組み込んだ学習プロダクトを作成することができました。
効果的なマネージャー アドバイザー プログラムのためのヒント
マネージャー アドバイザー プログラムの詳細な仕様は組織のニーズやビジネス環境のタイプによって異なりますが、ここでは留意すべきいくつかの基本原則を紹介します。
-
計画的に参加者を集める
アドバイザー グループが組織全体を完全に代表できるわけではないですが、できる限り組織の大部分を反映できるように、幅広い背景、役割、経歴を持つメンバーを積極的に探しましょう。また、めったに意見を聞くことがない人や、必ずしも全面的に賛同しているわけではない人にインプットを求めることも必要です。
Google では、定期的にプログラムを再編成して、新しい刺激的な意見を取り入れています。最初のラーニング アドバイザーグループの参加者は約 60 名でしたが、現在の 5 代目のグループには約 130 名の参加者がいます。
-
最初から「契約」を明確にする
マネージャーは多忙です。アドバイザー グループの信頼を得て積極的なエンゲージメントと参加を促進するには、毎月の参加時間、プログラムの期間、アドバイザーのフィードバックが影響を与えられる対象とそうでない対象を明確にすることが重要です。Google のプログラムでは、関心があるマネージャーは、参加によって想定される事項を最初に確認および同意して、応募プロセスを完了します。
また、参加者にとってどのようなメリットがあるかも明確にします。ボランティアを募集する際、Google ラーニング アドバイザー プログラムは、Google の学習文化に情熱を持つグローバル ネットワークに参加するチャンスとして、また、会社全体のマネージャーに影響を及ぼすプログラムに積極的に関与する機会として紹介されます。
-
エンゲージメントを維持する
グループのペースと推進力を維持するには、隔週または少なくとも月に一度のペースで、定期的に連絡を取ります。また、アクティビティの内容を変更してグループ メンバーの関心を維持します。Google がこれまでに実施した創造的アクティビティには次のようなものがあります。
- 自分の感情または反応を表現した画像をマネージャーに選択してもらう
- 開発中の初期段階のプログラムに関するフィードバックを明らかにするためのフォーカス グループ ディスカッションを開催する
- グループ メンバーに言葉遊びの形式で「未来の自分からのポストカード」に記入してもらう

キャプション: 言葉遊びを利用したラーニング アドバイザーの創造的アクティビティの例。
-
アドバイザー自身に焦点を当てる
アドバイザー グループに質問するときは、アドバイザー自身に焦点を当てます。質問によって求めるのは、他人ならどう感じるかや常識ではどう考えられるかではなく、アドバイザー自身の個人的な実際の経験をそのまま反映した回答です。質問と創造的アクティビティの焦点をできる限り個人的なものに絞りましょう。たとえば、「マネージャーが X の効果を最大限に高めるにはどうすればよいでしょうか?」のような一般的な質問は、「もしあなたが X を担当するなら、何をしますか?」のように言い換えます。
-
探究を重視する
この種の質的調査の目的は探究です。主張の証明や仮説の検証ではなく、対象メンバーについて詳しく知ることに集中しましょう。「アドバイザーの 70% が X と回答した」のような主張ではなく、新しいアイデアや方向を示すインサイトの発見を目指してください(母数が小さい場合、パーセンテージに統計的有意性はほとんどありません)。
-
フィードバックの繰り返しで共同作業を進める
アドバイザリ グループを継続的なコラボレーションとして捉えましょう。変更を加えてはフィードバックに基づいてまた変更するという手順を繰り返し、正しい方向に進んでいるかどうかをアドバイザー グループに何度も確認します。こうしたフィードバックの繰り返しが羅針盤として機能し、草案の作成、テスト、改善、再テストを行えるようになります。
-
アドバイザーのストーリーを活用する
インパクトのある引用やストーリーには、統計データやレポートにはない感情に訴える力があり、読み手の深い共感を呼ぶことがよくあります。積極的にアドバイザーの発言を引用し、彼らのストーリーを最大限に活用しましょう。もちろん、本人の許可を得ること、また匿名性を約束した場合はそれを守る必要があります。
Google ラーニング アドバイザー プログラムは、Google School for Leaders がマネージャーを人間的に理解し、マネージャーとそのニーズに合わせてプロダクト、プロセス、戦略を策定するのに役立ちます。アンケートや全社的な調査イニシアチブなどの量的調査と組み合わせてこのようなアドバイザー グループを活用すると、マネージャーの経験に対する理解が深まります。自社での効果的なマネジメント文化の育成を目指す場合は、独自のアドバイザー プログラムを創設して、フィードバックを収集し、マネージャー向けのソリューションを共同作成することを検討してみましょう。それが最終的には従業員のエンゲージメントと能力を高めることにつながります。