人事に関する意思決定の成果は、可能な限り記録をデータベースに保存し、適切な分析担当者がアクセスできるようにすることが重要です。Google で収集し始めた指標の一部を以下にご紹介します。
- 採用(応募者、フィードバック、面接の評価点、内定データなど)
- 業績(人事評価など)
- 昇進(推薦、査定結果など)
- 報酬(基本給、昇給、ボーナスなど)
Google のピープル アナリティクス チームでは、これらのデータを性別ごとに(サンプル数が十分に大きい場合は民族別に)集計し、各データソースの傾向を分析しています。この分析結果を解釈可能なものにするため、関連のある制御変数をできるだけ多く取り込むことが大切です。チームが取り組んでいるのは、同じ仕事、同じレベルの従業員を比較し、それぞれの結果変数に影響している可能性のある要因を解明することです。
このような人事に関する意思決定を定期的にチェックすることにより、チームは昇格のプロセスに差異があることを特定できました。Google では一定間隔で昇格比率を確認、報告し、その割合を性別ごとに分けて違いがあるかどうか調べています。2010 年に、チームは男性と女性のソフトウェア エンジニアの間に差があることを発見しました。Google のエンジニアは、1 つ上の職務になる自信が持てるようになったときに、自らを昇格対象者として自薦することができます。ある期間の Google のデータでは、若手女性ソフトウェア エンジニアの昇格者の割合は、若手の男性エンジニアに比べて低いことを示していました。ピープル アナリティクス チームが調査した結果、この問題は自己推薦者の比率に差があることから生じていることがわかりました。多くの文化において、女性よりも男性のほうが抵抗なく自分をアピールできる傾向がみられますが、能力が同程度の男女の従業員を比較すると、自己推薦を行う割合は男性のほうが女性よりも平均的に高くなっていました。この問題を解決するために、従業員から尊敬されていたある幹部がこのデータを Google 社員と共有し、すべてのエンジニアに対して、心構えができたら自己推薦をするよう奨励しました。またマネージャーに対しては、昇格候補になる従業員がいないか常に目を配るよう指示しました。このことをきっかけに、男女の昇格者の比率は等しくなりました。