データを集めてアウトカムを測定する

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偏見の排除

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じめに

定量的評価は、偏見を排除するうえで重要なものです。自らの取り組みについて正しく理解し、検証しなければ、どこにどのように努力を集中させるかを判断できません。Google では偏見の排除に取り組むにあたり、以下の 3 つの定量的評価カテゴリを設定しています。

  1. 従業員に影響を与える、定量化可能な意思決定から生み出されたアウトカム
  2. 文化、ダイバーシティの受け入れ、職場環境に関する考え方や経験
  3. 偏見の排除を目的とした行動のインパクト

アウトカムを測定する

人事に関する意思決定の成果は、可能な限り記録をデータベースに保存し、適切な分析担当者がアクセスできるようにすることが重要です。Google で収集し始めた指標の一部を以下に紹介します。

  • 採用(応募者、フィードバック、面接の評価点、内定データなど)
  • 業績(人事評価など)
  • 昇進(推薦、査定結果など)
  • 報酬(基本給、昇給、ボーナスなど)

Google のピープル アナリティクス チームでは、これらのデータを性別ごとにサンプル数が十分に大きい場合は民族別に集計し、各データソースの傾向を分析しています。この分析結果を解釈可能なものにするため、関連のある制御変数をできるだけ多く取り込むことが大切です。チームが取り組んでいるのは、同じ仕事、同じレベルの従業員を比較し、それぞれの結果変数に影響している可能性のある要因を解明することです。

このような人事に関する意思決定を定期的にチェックすることにより、チームは昇格のプロセスに差異があることを特定できました。Google では一定間隔で昇格比率を確認、報告し、その割合を性別ごとに分けて違いがあるかどうか調べています。2010 年に、チームは男性と女性のソフトウェア エンジニアの間に差があることを発見しました。Google のエンジニアは、1 つ上の職務になる自信が持てるようになったときに、自らを昇格対象者として自薦することができます。ある期間の Google のデータでは、若手女性ソフトウェア エンジニアの昇格者の割合は、若手の男性エンジニアに比べて低いことを示していました。ピープル アナリティクス チームが調査した結果、この問題は自己推薦者の比率に差があることから生じていることがわかりました。多くの文化において、女性よりも男性のほうが抵抗なく自分をアピールできる傾向がみられますが、能力が同程度の男女の従業員を比較すると、自己推薦を行う割合は男性のほうが女性よりも平均的に高くなっていました。この問題を解決するために、従業員から尊敬されていたある幹部がこのデータを Google 社員と共有し、すべてのエンジニアに対して、心構えができたら自己推薦をするよう奨励しました。またマネージャーに対しては、昇格候補になる従業員がいないか常に目を配るよう指示しました。このことをきっかけに、男女の昇格者の比率は等しくなりました。

考え方や経験を評価する

どのような意思決定が下されたかだけでなく、その決定が従業員やその周囲にどのように影響しているかを理解することも重要です。Googleでは、無意識の偏見が、人の考え方、経験、職場での行動に与える影響を把握し、ダイバーシティを受け入れる雰囲気や公正さを高めるための取り組みを行っています。

カルチャーを評価することは大変重要です。それは従業員が自分の価値を実感し、組織に受け入れられ公平に扱われていると感じているかどうか、また自分が成長できる場所として組織全体をとらえているかどうかを知るうえで役立つからです。これらは重要な評価項目です。仮に、前述した意思決定の結果に性別や人種・民族による差がなかったとしても、それだけでは評価として十分ではありません。経験や考え方を評価するためには適切な問いが必要です。そのための主な手段として Google が活用しているのが、従業員を対象に年に一度行っている意識調査、Googlegeist (グーグルガイスト)です。この調査の質問では、たとえば以下のようなことに言及します。

  • インクルージョン(ダイバーシティの受け入れ): Google の女性社員、男性社員、社会的マイノリティグループに属する社員、マイノリティではない社員が、皆同じように受け入れられ、自分の価値を認められていると実感しているか。分析担当者はこの種の質問に対する回答、たとえば「自分が周囲とは違っていても、職場で自分らしくいられる」、「Google は、性別や人種・民族、文化的背景に関係なくすべての社員が自分の能力を十分に発揮できる場所である」などを比較することにより、ダイバーシティの受け入れ、つまりインクルージョンに対する社員の感覚を評価することができます。Google では、従業員とマネージャーの関係にも注目しています。調査では、「あなたがチームにもたらす視点がマネージャー自身の見方とは異なる場合でも、マネージャーの行動はその視点を評価していることを示しているか」、「あなたのワークグループには多様な考え方が評価される雰囲気があるか」などの質問をします。
  • 公平性: 人事に関する意思決定についての従業員の認識は、その意思決定による実際の結果と同じくらい重要です。この認識を評価するために、Google では従業員に対して、昇格プロセスが公平と感じるか、貢献したことが正当に評価されているか、報酬が公正であるかどうかについて、意見を聞いています。

誰よりも早く情報を集める

自分がデータを集めていなくても、他の誰かが集めている場合がある、という事例をご紹介します。

Google では長年にわたり、有名な科学者や探検家、革新をもたらした人々の誕生日を Google ホームページで祝っています。ロゴのデザインを変えた Google Doodle制作し、偉大な歴史上の人物の功績を楽しみながら称えてきました。

ところがあるとき、Google が祝っていた著名人は大部分が男性だったことが判明します。これを指摘したのは、すべての Doodle を記録していたある STEM(科学・技術・工学・数学) 教育者でした。彼女は Doodle で取り上げられた著名人の男女の内訳を公開した記事投稿し、Google に改善を求める手紙を公開していました。

このデータを見てショックを受けた Google Doodle 担当チーム(メンバーの約半数は女性なのです)は、Doodle に登場する男女の比率を確認して状況を改善するためのプロセスの設定に直ちに取り掛かりました。この厳しい現実に直面してから 1 年後、2014 年の Doodle で取り上げられた著名人の男女比は 1 対 1 となりましたDoodle チームは今日も、Doodle のダイバーシティを追求し続けています。

世界中の Google Doodle に登場した著名人の性別

取り組みのインパクトを測定する

Google では、偏見の排除に継続的に取り組む中で、いくつかの取り組みの立案、プロセスの再設計、研修プログラムの策定を行ってきました。これらの施策が Google および 社員に有益な変化をもたらすためには、その効果を測定することが不可欠です。残念なことに、ダイバーシティの受け入れに関するこれまでの調査結果から、ポジティブな意図で行われた多くの取り組みが必ずしもプラスの成果をもたらすとは限らず、数々の試みが思いも寄らないマイナスの効果を生むことがわかっています。したがって、何かを変更しようとするときは体系的に展開すること、そして効果の測定は入念に行うことが重要です。

プログラムを展開するにあたっては、可能な限り、実験的な方法で進めるのが理想的です。人事関連の取り組みで参考になるのは、医学研究における薬の臨床試験です。臨床試験では、被験者の治療群と対照群、仮説、データ収集期間、分析の比較群、定量的な結果が構成要素となっています。Google では、Unconscious Bias @ Work の効果を調べるための実験行いました。そして、プログラムを系統立てて展開したことにより効果があったという、十分な根拠に基づいた結論に達しました。A/B テストを実施できない場合には、縦断調査、つまり長期間にわたり調査対象集団の変化を追跡する方法を検討してみましょう。

プログラムの効果を調べるためには適切なデータを集めることが不可欠ですが、それは大変難しいものです。取り組みには明確で具体的な目標を設定する必要があり、評価はそれらの目標と直接関係していることが必要です。評価基準が不正確だと、結果があいまいになる可能性があります。成功をどう定義し、結果をどう測定するか、慎重に検討することが大切です。