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「効果的なチームとは何か」を知る

「効果的なチームとは何か」を知る

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  • はじめに
  • 「チーム」とは何かを定義する
  • 「効果的なチーム」とは何かを定義する
  • データを収集してチームの効果性を測定する
  • 効果的なチームに固有の力学を突き止める
  • ツール: チームに必要なものを見極める
  • ツール: 心理的安全性を高める
  • チームがアクションを起こすことを手助けする

はじめに

Google に限らず、多くの組織では、仕事のかなりの部分をチームによる共同作業で進めています。チームは真の成果を生み出す最小の単位で、画期的なアイデアが生み出され評価される場です。従業員はほとんどの仕事をチームの一員として行います。しかし、チームの対人関係に問題が生じたり、メンバーのスキルが適切でなかったり、あるいはチームとしての目標が明確でなかったりすると、生産性の低下やメンバー間の摩擦が生まれるといった問題が生じかねません。

Google のピープル アナリティクス チームは、「Project Oxygen」というリサーチ プロジェクトによって、「優れた上司の条件」を突き止めることに成功しました。このプロジェクトの成功を受けて、Google の研究者はその後、Google 社内で効果的なチームの特徴を明らかにするため、同じ手法を用いて新たなリサーチを実施しました。アリストテレスの言葉「全体は部分の総和に勝る」(Google の研究者も、「従業員は単独で働くよりもチームで働いた方が大きな成果を上げられる」と考えています)にちなみ、「Project Aristotle」と名付けられたこのプロジェクトの目的は、「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに対する答えを見つけ出すことです。

同プロジェクトに携わる研究者についての詳細は、The New York Times の記事「What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team」をご覧ください。

「チーム」とは何かを定義する

「効果的なチームの条件とは何か」という問いに答える第一歩は、「チームとは何か」を明確にすることです。哲学的な思考実験に終始するのでなく、どのようなメンバーがチームを構成するのか、メンバー同士の関係性はどのようなものか、チームとして共に働くなかで、メンバーそれぞれが担う責任は何かなどを具体的に解き明かすのは容易ではありませんが、効果的なチームの条件を分析するうえでは必要なことです。 そもそも、「チーム」という言葉の意味は 1 つではありません。チームに課せられたタスクの相互依存性や、組織における位置付け、チームの存続期間によって、さまざまな定義や枠組みが存在しますが、Google のリサーチチームは、最も根本的なレベルとして「ワークグループ」と「チーム」の区別を試みました。

  • ワークグループ: 相互依存性が最小限という特徴があり、組織または管理上の階層関係に基づいています。ワークグループのメンバーは、情報交換のために定期的に集まる場合があります。
  • チーム: メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認します。チームのメンバーは、作業を行うために互いを必要とします。

組織図が示すのは、全体像の一部にすぎません。そこで Google のリサーチチームは、メンバー間の関係に高い相互依存性があるチーム(そのように自認しているチーム)に焦点を当てることにしました。最終的には、メンバー数 3~50 名のチーム(中央値は 9 名)を対象にリサーチを実施しています。

「効果的なチーム」とは何かを定義する

リサーチチームは、Google 社内のチームについて定義できたところで、次はチームの効果性を定量的に測る方法を見出す必要に迫られました。書いたコードの行数、修正したバグの数、顧客満足度など、さまざまな指標を検討しました。が、このリサーチの過程で、当初はチームの効果性を客観的に測る指標を重視していたリーダーらは、提案された指標はどれも本質的に不完全であるかもしれないという可能性に気づきました。いくらコード数が多くても質が高いとは限りませんし、たくさんのバグを修正しているということは、そもそもバグが多かったということになるからです。 そこでリサーチチームは、定性的な評価と定量的な指標を組み合わせて使用することにしました。定性的な評価では、マネージャー、チームリーダー、チームメンバーという 3 つの立場からの意見を収集するという前提で、この 3 者に同様の尺度を使ってチームを評価するように依頼しました。その評価について説明を求めたところ、立場によってチームの効果性の評価に用いる指標が異なることがわかりました。

チームの効果性を測る為に最も重要な指標としてマネージャーが挙げたのは、売上高やサービスの立ち上げなどの「結果」でした。これに対しチームメンバーは、「チーム内の文化と風土」が最も重要であるとしています。チームリーダーの意見はちょうどその中間で、当事者意識やビジョン、目標など、大局的な問題と個人的な問題の両方を挙げていました。

そこでリサーチチームは、チームの効果性を次の 4 つの観点で測ることにしました。

  1. マネージャーによるチームの評価
  2. チームリーダーによるチームの評価
  3. チームメンバーによるチームの評価
  4. 四半期ごとの売上ノルマに対する成績

定性的な評価は、結果や文化を理解するのに役立ちますが、主観が入り込むことは避けられません。一方、定量的な指標は、チームの効果性を図る具体的な物差しになる一方、個別の事情を考慮することができません。そこで、上記 4 つの指標を組み合わせれば、チームの効果性を総合的かつ的確に把握できるようになります。

データを収集してチームの効果性を測定する

リサーチチームは、世界中のマネージャーから集めた情報を元に、リサーチの対象とする 180 のチームを決定しました。内訳は、エンジニアリング系のプロジェクト チームが 115、営業チームが 65 で、業績の高いチームと低いチームの両方が含まれています。そのうえで、チームの構成(メンバーの性格的な特性や営業スキル、年齢・性別などの人口統計学的な属性など)とチームの力学(チームメンバー同士の関係性など)がチームの効果性にどう影響するかを調べました。リサーチにあたっては、チームの効果性に関する Google 自身の経験に加え、既存のリサーチ研究から得たアイデアを利用しています。

まず、チームリーダーを対象に二重盲検式で数百件の聞き取りリサーチを実施し、彼らの考える「チームの効果性を向上させる要素」を調べました。続いて、Google 社員のエンゲージメントを調べた年次調査やワークライフ バランスに関する Google の継続的な追跡調査 gDNA の 250 項目を含む既存のリサーチデータを分析し、チームの効果性に影響している可能性のある変数を特定しました。このリサーチでは、被験者に次ような設問を示し、同意するかどうかを尋ねています。

あわせて、在職期間や職務レベル、勤務地などのメンバー属性に関する変数も収集しました。

効果的なチームに固有の力学を突き止める

リサーチチームは、複数の統計モデルを駆使して、収集した大量のデータ項目のうち何がチームの効果性に影響を与えているのかを突き止めようとしました。数百に及ぶ変数に対して 35 種類以上の統計モデルを適用し、次のような因子を特定しようと試みました。

  • 成果に関する複数の指標(定性的な指標と定量的な指標)に影響を与えた因子
  • Google 社内の複数の異なる種類のチームで確認された因子
  • 一貫して確固たる統計的有意性を示した因子

その結果、リサーチチームは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。チームの効果性に影響する因子を重要な順に示すと次のようになります。

チームの効果性に影響する因子

リサーチチームは、Google 社内のチームの効果性にそれほど影響していない変数も明らかにしています。

  • チームメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り働くこと)
  • 合意に基づく意思決定
  • チームメンバーが外交的であること
  • チームメンバー個人のパフォーマンス
  • 仕事量
  • 先任順位
  • チームの規模
  • 在職期間

上記の変数が、Google のチームの効果性に大きな影響を与えていなかったことは事実ですが、どの組織でも同じであるとは限りません。たとえば Google の分析では、チームの規模は大きな意味をなしていませんでしたが、規模の重要性を示す研究は数多く存在します。人数の少ないチーム(メンバーが 10 人未満のチーム)の方が人数の多いチームよりも成功しやすいと、多くの研究者が指摘しています(Katzenbach & Smith, 1993Moreland, Levine, & Wingert, 1996)。また、人数の少ないチームの方が「仕事と家庭のクオリティがよい」(Campion et al., 1993)、「仕事の成果が大きい」(Aube et al., 2011)、「軋轢が少なく、コミュニケーションが緊密で、団結力がある」(Moreland & Levine, 1992Mathieu et al., 2008)、「組織的に行動する」(Pearce and Herbik, 2004)とする研究もあります。

チームに必要なものを見極める

Google のリサーチチームは、従業員にリサーチ結果を伝えるだけでなく、従業員が自身のチームの力学を把握し、チームの効果性を向上させるヒントを得て欲しいと考え、チーム内でのディスカッションに利用できるアンケート調査を作成しました。調査項目は、チームの効果性の向上に関する 5 つの柱に焦点を当てた内容となっており、次のような設問が含まれています。

  • 心理的安全性 - 「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。
  • 相互信頼 - 「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。
  • 構造と明確さ - 「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。
  • 仕事の意味 - 「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。
  • インパクト - 「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解している」か。

リサーチチームは、アンケートを実施したチームのリーダーに対し、匿名化した集計結果を渡し、チームメンバーとのディスカッションの材料に使うよう促しました。多くの場合、ディスカッションには人事管理担当者が進行役として加わりましたが、チームリーダーが人事管理チーム作成のディスカッション ガイドを利用して進行役を務めることもありました。

カスタマイズ

チームの効果性に関するディスカッション ガイド

Google のリサーチチームが発見した、チームの効果性に大きな影響を与える 5 つのチーム力学に焦点を当てたディスカッション ガイドです。このガイドは、チームが改善の余地がある領域を見極め、具体的な改善策を導き出す手助けになります。

心理的安全性を高める

Google のリサーチチームが発見した、チームの効果性が高いチームに固有の 5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性です。リサーチ結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い、という特徴がありました。

「チームの心理的安全性」という概念を最初に提唱したのは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー エドモンソン氏です。同氏は、この概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています。チームメンバーに対してリスクのある行動を取ることは、特別難しいことではないと思われるかもしれません。しかし、「このプロジェクトの目標は何ですか?」などのように、ごく基本的な質問をするときのことを想像してみてください。「そんなこともわかっていないのか」とあきれられることへの不安を覚えるのではないでしょうか。無知だと思われないように、質問をせずにやり過ごそうとする人も少なくないはずです。

チームの心理的安全性がどの程度のレベルであるかを調べる際、エドモンソン氏は、次の文が自分自身に強く当てはまるかどうかをチームメンバーに尋ねます。

  1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
  2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
  6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

エドモンソン氏は、TEDx Talks でのスピーチの中で、チームの心理的安全性を高めるために個人にできる簡単な取り組みとして、次の 3 点を挙げています。

  1. 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える。
  2. 自分が間違うということを認める。
  3. 好奇心を形にし、積極的に質問する。

Google のリサーチチームは、社内にリサーチ結果を広める為に、各チームを対象にワークショップを実施しました。ワークショップでは、匿名化したシナリオを用いて、チームの心理的安全性に好影響を与える行動と悪影響を与える行動を紹介し、ロールプレイでシナリオを示した後、その解説を行いました。以下は、ワークショップで取り上げたシナリオの一例です。

心理的安全性のシナリオ | アイデアとイノベーション

技術的な専門知識に精通するAさんは、長年にわたりマネージャー職を担当しています。この 2 年間は、大規模プロジェクトの運営を担当する XYZ というチームのマネージャーを務めてきました。Aさんは、もともと要求水準の高い人物でしたが、ここ数か月は、ミスやありきたりなアイデア、自身の考え方にそぐわない出来事を受け入れない不寛容な側面が目立つようになっていました。

先日Aさんは、経験豊富なチームメンバーが提案したアイデアを皆の前で厳しく非難し、さらに本人のいないところで辛らつな批判を繰り広げました。Aさん以外のメンバーは皆、このアイデアには説得力があり、裏付け調査も十分で、試してみる価値はあると考えていたにもかかわらずです。この出来事の後、メンバーからアイデアが提案されることはありませんでした。

Aさんのアイデアが採用された新しい企画書は、創造性と新規性に欠けるという理由で、最終的に経営陣から却下されました。

シナリオ紹介後の質問:

  • 心理的安全性が表れているのはどの振る舞いですか?
  • 心理的安全性の欠落を示唆しているのはどの振る舞いですか?
  • 心理的安全性が非常に重要なのはなぜだと思いますか?チームにおいて、心理的安全性の有無はどのような違いをもたらしますか?ご自身のチームを振り返ってみるとどうですか?

マネージャーの方は、チームメンバーにコーチングを行う際、ここに示した内容を参考にしてみてください。

カスタマイズ

心理的安全性を高めるためにマネージャーにできること

このガイドでは、チームの心理的安全性をモデル化、強化するための考え方を紹介しています。調査研究に基づく、マネージャーとチームメンバー向けの具体的なアドバイスに従うことで、メンバー全員が貢献できるチーム環境を実現できます。

チームがアクションを起こすことを手助けする

Google のリサーチチームが発見した効果的なチームに共通する 5 つの特徴は、より広い範囲を対象としたチームのパフォーマンスの研究に基づくものです。Google の開発者でも、脚本家チーム火星探索チームアイスホッケー チームの一員でも、いい仕事をして成果を出すためには、やはりチームが重要となります。Google のリサーチチームは効果的なチームにみられる特徴を見つけました。 次はチームの効果性を生み出し、育み、強化する為に取るステップを見つけ出すためのリサーチを進めています。

効果的なチームの特徴は組織によって違い、Google のリサーチチームが発見した特徴とも違うかもしれませんが、チームの取り組みを共有するステップとして以下を推奨します。

1. 共通認識を持つ - 組織内で培いたいチームが取るべき行動や行動規範を定義します。

2. チームの力学について話し合う場を作る - 通常は話しにくい話題について、オープンに、そして建設的に話し合うための場を設けます。人事関連のビジネス パートナーやプロのファシリテーターに話し合いの場で同席してもらう事も考慮してください。

3. チームの強化と改善にリーダーを巻き込む - リーダーを巻き込むことにより、継続的な改善やモデル化を促します。

以下に示すのは、Google のリサーチチームが発見した効果的なチームに必要な振る舞いを促すために、マネージャーやリーダーができる事へのヒントです。これらのヒントは、外部のリサーチ結果と Google 自身の経験に基づいています。

心理的安全性:

相互信頼:

  • 各チームメンバーの役割と責任を明確にする。
  • 各メンバーの仕事に透明性をもたらす具体的なプロジェクト計画を策定する。
  • 誠実さに関するリサーチ研究について話し合う。

構造と明確さ:

  • チームの目標を定期的に周知し、目標達成のための計画をメンバーに理解させる。
  • チームでミーティングを開く際には、明確な議題を設定し、リーダーを指名する。
  • チームの仕事を整理する「目標と成果指標(OKR)」の導入を検討する。

仕事の意味:

  • チームメンバーが効果的に行なっている取り組みに対して好意的なフィードバックを提供し、メンバーが課題に直面している場合には手を差し伸べる。
  • 誰かが自分を助けてくれた場合は、メンバーの前で感謝の気持ちを伝える。
  • 目的意識に関する KPMG の事例を読む

インパクト:

  • 各チームメンバーの仕事が、チームや組織の目標達成に貢献するような明確なビジョンを共同で策定する。
  • 自分またはチームの仕事がユーザーや顧客、組織に与える影響をよく考える。
  • ユーザーの目線で物事を評価する仕組みを導入し、ユーザーに焦点を当てる。