いきなりデータや指標の選択に取り掛かってはいけません。まずは、これまでに組織や業務について感じていた疑問を振り返ることから始めます。そのうえで、それらの疑問に対する答えを導き出すために、どういうデータが必要かを検討します。最初にじっくり時間をかけて、何が問題なのかを明確に定義しておくことが重要です。
組織にとって最も重要な問題や疑問を定義するにはどうしたらいいでしょうか。まずは企業や組織にとっての緊急の課題を理解し、それらの課題を解くためにはどのような人事方針、人事制度が最適かを検討しましょう。どのような課題において、ピープル アナリティクスが有効かは、以下の 3 つの要素に注目してください。これらは、米国で健康管理の改善に利用されているトリプルエイム(3 つの目標)フレームワークを応用したものです。
**1.有効性。 **人事に関わる制度、方針、プロセスが、適切な成果につながっているでしょうか。たとえば採用プロセスであれば、その有効性を高めることで、より優れた人材を獲得できるようになります。
**2. 効率性。 **同じ成果を、より短い期間、より少ない費用、より少ない人数で実現することはできないでしょうか。採用の例で言えば、効率性を高めることによって、採用 1 人あたりの費用を抑えることができます。
**3. エクスペリエンス。 **人事とは、文字通り「人」に関わる事柄です。人事制度やそのプロセスにおいて、個人のエクスペリエンスは改善されているでしょうか。採用で言えば、面接や面接官とのやり取りについて、候補者がどう感じたかを測定できれば改善につながるかもしれません。
これら 3 つの要素の重要性のバランスは、組織の文脈によって異なります。最善なのは、有効性、効率性、エクスペリエンスの 3 つを同時に改善することですが、これらの項目間は矛盾が生じることも少なくありません。1 つの要素を改善するとき、他の要素に影響が出ないか、望ましくない影響を最小限に抑えるにはどうしたらよいかを常に考える必要があります。