面接担当者をトレーニングする

面接担当者をトレーニングする

じめに

面接を行う目的は優れた人材を見つけ出すことだけではありません。従業員を面接担当者として参加させることができれば、企業文化を浸透させ、仲間意識や帰属意識を強められるなどのメリットもあります。また、採用の意思決定に関わる情報を従業員が認識することで、組織に対する当事者意識を育むことができます。従業員は企業文化のオーナーであると同時に担い手でもあります。その従業員に面接を担当してもらうことにより、従業員のエンゲージメントを高めることができるのです。

面接を全社員の仕事とする

Google の社内調査によると、応募者からのフィードバックで最も多いのが面接担当者とのやり取りについてのものです。採用プロセス全体で見ても、職種や福利厚生、採用担当者とのやり取りより重視されています。Google はこのことを面接担当者に伝え、面接担当者が企業文化の代弁者としていかに決定的な役割を担うかを強調しています。

このような背景に加えて採用チームが毎年数千人の応募者を面接しているという現状を鑑み、Google では、すべての Google 社員に面接を担当してもらいたいと考えています。採用チームでは、さまざまな年齢層や性別、職務レベルから幅広い面接担当者を選定するように努めています。指名された面接担当者は、応募者に求められる要件面接プロセスの全体像把握します。面接担当者が、求めている人物像とそれが全社的構想にどのように関係するのかをより深く理解しているほど、より効果的に面接を行えるようになります。

面接担当者用トレーニング チェックリストを使用する

面接担当者が基本事項と一般情報を押さえているかどうかを確認するための質問のリストをご紹介します。トレーニングの際にご利用ください。

面接担当者は

  • 会社の採用プロセスと、そのプロセスにおける自分の役割を理解しているか。
  • 面接の準備方法を知っているか(質問を作成する、時間を割り当てる、履歴書に目を通すなど)。
  • 応募者が内定をもらったかどうかにかかわらず、会社に対して素晴らしい印象を与えられるような面接を実施するためのスキルがあるか。
  • 法令を遵守した面接の実施方法を知っているか。
  • 効果的なフィードバックを提供し、意味のある面接スコアを付ける方法を知っているか。
  • 面接後のプロセスを理解しているか。

カスタマイズ

面接担当者のトレーニング チェックリスト

面接担当者の準備にお役立てください。

面接担当者用クイック リファレンスを共有する

面接担当者の準備と、面接の重要性を理解することに役立つ、おすすめの方法やヒントをご紹介します。

カスタマイズ

面接担当者用クイック リファレンス

このクイック リファレンスには、面接担当者に求められる行動やふさわしい質問、さらに、気をつけたい注意点などが記載されています。

面接のトレーニングをする

面接担当者をトレーニングする最良の方法は、面接の評価について一貫した基準を持てるように、訓練を積んでもらうことです。Google では、これを「カリブレーション(評価の調整)」と呼んでいます。面接担当者間でのカリブレーションは、有効な評価を確実に下せるようにするための最も重要な方法の 1 つです。

グループによっては経験豊富な面接担当者を「シャドーイング」するという方法で、新しい面接担当者の調整を行っています。新しい面接担当者に面接を数回シャドーイングしてもらってから、今度は「リバース シャドーイング」、つまり新しい担当者が面接を行い、それを経験のある担当者が観察してフィードバックを提供する、というプロセスをふんでいます。

リバース シャドーイングのプロセスは次のとおりです。

面接の前:

  • 新しい面接担当者は、経験豊富な面接担当者との非公式のミーティングを設定します。
  • 新しい面接担当者は、聞く予定の質問(補足質問を含む)、応募者に期待する回答、その質問が意思決定にどのように役立つか、など面接の実施方法について行動計画を示します。
  • 経験豊富な面接担当者はこの段階でフィードバックを示します。

面接中:

  • 新しい面接担当者が面接を主導します。
  • 経験豊富な面接担当者は静かに座って観察しますが、面接を正しい方向に導く必要がある場合は発言してかまいません。それにより、面接のクオリティが保たれます。

面接の後:

  • 新しい担当者と経験豊富な担当者の両方が個別にフィードバックを記述し、応募者を評価する面接スコアを付けます。このプロセスは大変重要です。これにより、採用委員会はさまざまな経験を持つ面接担当者からフィードバックを得ることができます。
  • シャドーイングとリバース シャドーイングの後、新しい面接担当者は経験豊富な面接担当者との非公式のミーティングを設定し、面接での質問の質、フィードバックの質、面接のやり方についてのその他のヒントなどを話し合うことができます。面接スコアを比較して、相違点があれば検討します。
  • Google の独立採用委員会は、最終的な採用決定を下す際に面接での担当者によるフィードバックを重視します。そのため、採用委員会では、面接の評価が役立ったかどうかについて面接担当者宛にさらにフィードバックを提供することも重視しています。Google ではこれを「フィードバックに対するフィードバック」と呼んでいます。委員会が面接担当者に、面接のフィードバックの改良点について伝えるためです。お気づきのとおり、Google ではフィードバックが尊重されているのです。

フィードバックを明確に記述する

面接担当者のフィードバックは採用を決定する際に不可欠なものです。そのため採用チームでは、面接担当者が採用の判定に役立つフィードバックを提供できるよう、また注意点を見逃さないよう、次のように指導しています。

  • あいまいな意見を書いたり、履歴書を要約したりしない。「頭が良さそうだ」「名門大学を卒業している」などのフィードバックは採用委員会の意思決定に役立ちません。
  • ルーブリック(評価基準表)の情報を繰り返さない。ルーブリックには評価の内容が記載されています。たとえば、仮に「水中籠編み」という評価項目があったとしましょう。この「優秀」欄にチェックマークを記入するだけで、籠制作の計画段階で材料の使い方まで十分に検討した、といったことが採用委員会に十分に伝わります。そのため、コメント欄ではそれ以上のことを説明してください。情報を繰り返し述べるのではなく、例を示してください。
  • 応募者の性格に気を取られたり、仕事と関連のない点を評価したりしない。その職務で成功するための要件を常に意識してください。
  • 先延ばしにしない。面接のフィードバックはできるだけ早く、記憶が鮮明なうちに記述してください。

Google の採用プロセスでは、このフィードバックは意思決定の判断材料として採用委員会に提出されます。採用委員会のメンバーは、実際に応募者を面接することはないため、受け取ったフィードバックの記述がすべてになります。採用委員会は「フィードバックに対するフィードバック」を提供することで、フィードバックが役に立ったかどうか、長すぎる(または短すぎる)どうか、別の点を重視するべきかどうかなどを、面接担当者に知らせます。

面接担当者が注意したい

Google では、採用チームが応募者からフィードバックを収集し、面接の改善に役立てています。応募者のフィードバックに基づいた、面接担当者への基本的なアドバイスをご紹介します。

  • 時間どおりに来る。面接担当者が遅刻すると応募者の信頼を損ないます。他の面接担当者の時間を奪うことにもなり、全般的に敬意が欠けている印象を与えます。
  • いきなり質問を始めない。応募者と面接担当者のどちらからも、この行為はネガティブな経験としてよく挙げられています。
  • アイコンタクトを取る。応募者からは、担当者がメモを取るのに夢中になっていたという苦情がよく寄せられます。詳しいメモを取るのは大切ですが、会話の弾む面接にするには、積極的な意思疎通が必要です。
  • 謙虚になる。面接担当者がまるで門番のように応募者を高圧的な態度で判断している、というフィードバックもよく寄せられます。面接担当者にとって、面接とは、応募者の回答の出来にかかわらず、職務に関連した難しくも大切な質問に答えられたと応募者に感じてもらうことを目標とし、応募者のスキルを評価するために協力し合う場です。面接担当者が自分を誇示する場ではありません。
  • 応募者を安心させる。失敗していると思わせないようにしてください。すべての応募者が面接に合格するわけではありませんが、見込みがまったくないと感じさせることは応募者のためになりません。