構造化面接を実施する

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採用

じめに

構造化された面接とは、簡単に言えば、同じ職務に応募している応募者に同じ面接手法を使って評価するということです。構造化面接を行うと、応募した職務自体が構造化されていない場合でも、応募者のパフォーマンスを予測できるという調査結果があります。Google では構造化面接を採用しています。つまり、すべての応募者に同じ質問をして、同じ尺度で回答を採点し、事前に決められた一貫した採用要件に基づいて採用を決定しています。

では、構造化面接の質問を使う組織があまり多くないのはなぜでしょうか。実は、質問を作成するのが難しいのです。構造化面接の質問は、記述してテストする必要があります。また、面接担当者が他の質問をしないように指導する必要もあります。さらに、同じ質問が何度も出されると予想した応募者同士が、情報を交換してすべての回答を用意してこないように、質問を絶えず更新する必要があります。別の調査によると、構造化面接があまり頻繁に用いられていないのは、一般に面接担当者は皆自分の面接が上手いと思っていて助けなど要らないと感じているからだということがわかっています。確かに、人の才能を見抜く力に長けていると思いたい人は多いでしょう。

しかし、こと採用に関しては、直感を信じてはいけません。初対面の相手に対してとっさに下す無意識の判断は、自分の中にある無意識の偏見や信念に強く影響される、という調査結果があります。たとえば面接の場合、知らず知らずのうちに、応募者の精緻な能力を評価することから、自分が感じた応募者の第一印象が正しいと確認できる証拠探しに意識が切り替わるのです。心理学者はこれを確証バイアス呼んでいます。

構造化面接は、小規模なチームから政府まで、あらゆる規模の組織に有効です。米国政府の連邦人事管理局では、政府機関の職員採用には構造化面接を使用するよう奨励し、誰でも利用できる無料のリソースセット提供しています。

構成要素を知る

構造化面接とは、応募者全員に一貫した同じ質問をし、明確な基準に従って回答を評価する面接です。調査研究などのために行われる面接では、常に構造化面接が行われます。応募者の面接において構造化面接を用いるのは、応募者に対する評価が応募者のパフォーマンスのみに基づくようにし、面接担当者による評価基準や質問の難易度が上下しても影響を受けないようにするためです。
Google の採用チームは、フィードバック アンケートやユーザー調査の結果から、構造化面接が応募者と面接担当者の双方により良い体験をもたらす、より公正な手法であることを確認しています。

構造化面接に対する Google のアプローチには、次の 4 つの側面があります。

  1. 職務に関連性のある、吟味された質の高い質問する難問奇問をしない
  2. 評価担当者が簡単に回答を審査できるように、応募者の回答に対する総合的なフィードバック文書にする
  3. 優れた回答、凡庸な回答、劣った回答がどのようなものかについて、すべての評価担当者が共通の認識を持てるように、標準化されたプロセス採点する
  4. 面接担当者が自信を持って一貫性のある評価を行えるように、面接担当者へのトレーニングを提供し、調整を図る

外部の調査結果について学ぶ

構造化面接には、予測妥当性の向上や応募者間の差異軽減などのメリットがあり、他にも過去 20 年間に多くの学術研究結果が発表されています。

  • 構造化面接を行うことで、予測の妥当性が向上し、 応募者間の差異が減少します。
  • 構造化面接の評価に用いるツール(研究者が「行動アンカー方式の評価尺度」と呼び、Google が「ルーブリック」と呼ぶもの)は、構造化されていない面接よりも予測性が勝るものです。

構造化面接では、十分にトレーニングした面接担当者が、事前準備された厳密かつ妥当な一連の質問をして、スコアガイドを使って面接の評価が正確であるかどうかを確認します。
Google ピープル アナリティクス チームで採用の有効性を専門とするメリッサ ハレル博士は次のように述べています。

「構造化面接は、最も優れた就職希望者つまり、予測の妥当性)を見極めるために最適なツールの 1 つであるだけではなく、他の一般的な面接手法によくある落とし穴に陥ることもありません。

構造化面接は、ダイバーシティに富んだ応募者グループにとってより公平である傾向が見られ、応募者は人格評価よりも構造化面接を好むようです。

Google の社内調査結果を読む

このトピックに関する優れた学術研究を踏まえて、Google の採用チームはグループをいくつか選んで構造化面接の手法を試すことにしました。結果はとても肯定的で、チームでは現在このアプローチを拡大しています。さまざまな職務用に構造化面接の質問とプロセスを作成し、構造化アプローチを使って面接できるよう面接担当者へのトレーニングを行っています。

これまでに見られた結果

  • 構造化面接では、職務で成果を出せる人材を他の手法より的確に見極めることができる: 複数の部門、レベルに配属された採用者のパフォーマンス スコアを面接時のスコアと比較したところ、構造化面接は構造化されていない面接よりも職務のパフォーマンスの予見性が高いという結果が出ています。
  • 面接担当者の満足度が高く、時間の節約になる: 事前に作成した質の高い質問やガイドライン、評価手続きを使用するので、1 回の面接で平均 40 分短縮できます。構造化面接を実施している Google 社員は、応募者を面接するための準備がより整っているように感じたと報告しています。
  • 構造化面接は応募者の満足度が高い: 構造化面接を受けた応募者のフィードバック スコアにおいて、応募者の満足度の上昇が確認されています。興味深いことに、不採用となった応募者のスコアを比較すると、応募者の満足度に特に大きな差があることがわかりました。構造化面接を受けて不採用となった応募者は、構造化面接を受けずに不採用となった応募者よりも満足度が 35% も高かったのです。

採用する人材の要件を定義する

面接の質問を作成する前に、チームと採用マネージャーとの間で、応募者に何を求めているのかをしっかりと理解しておくと良いでしょう。職務内容を見極め、その職務で成果をあげる人の要件と行動を特定するには、職務分析行うのが有効です。

Google では採用の際に期待する一般的な要件を 4 つ定めていますが、各組織の構成や特定の職務に応じて適切な要件や能力を決めることができます。

Google が求める 4 つの要件は次のとおりです。

  1. 一般的な認知能力: Google は、新しい状況を学び、それに適応できる有能な人材を求めています。これは、GPA や SAT のスコアではなく、応募者が現実の難題をどのように解決し、どう学ぶかを重視するということです。
  2. リーダーシップ: Google では、「エマージェント リーダーシップ」という特定の種類のリーダーシップを求めています。これは、正式な肩書きや権限を持たないリーダーシップの一形態です。Google では、さまざまなチームメンバーがリーダーの役割を引き受けて貢献する必要があり、このようなリーダーシップは、彼らが持つ特定のスキルの必要性がなくなればそのリーダーの役割を退くという、シビアな責務でもあります。
  3. Google らしさ: Google では、応募者が Google で能力を発揮できるかどうかを判断する物差しとして、あいまいさを許容できる性格、積極的な行動力、協調性の 3 つを持ち合わせているかどうかに注目しています。
  4. 職務に関連した知識: Google は、応募者が成果をあげるために必要な経験や経歴、スキルなどを備えているかを精査します。

面接の質問を作成する

効果的な質問は、応募者の評価に役立ちます。Google が面接で行う質問は、たいていの場合、まず導入部があり、続いて応募者の思考プロセスを理解するために用意された何パターンかのフォローアップがあります。ここでは、質問をある程度複雑にして、応募者が職務経験から得た知識だけでは解決できないようにこころがけています。

面接の質問を構成する要素:

  • 導入部ではシナリオを紹介します。応募者が思考のプロセスを説明したり、場合によっては解決策を提示できるように、明確でわかりやすい文にしてください。シナリオでは通常、仕事上で現実に遭遇する可能性があるが、技術的または職種固有のスキルがなくても対応できる状況を提示します。
  • フォローアップの質問には、導入部を掘り下げる内容をあらかじめいくつか用意します。問題を解決する方法を詳しく説明するように促す質問をすれば、応募者から非常に詳しい説明を引き出すこともできます。求められる要件のリストを参照して、導入部に含まれていないものを特定し、フォローアップの質問でそれらの領域を取り上げるようにしてください。

面接担当者は正解かどうかを評価することに気を取られず、応募者が問題を掘り下げ、意味を明らかにし、解決策を示すために用いた分析思考プロセスを審査することを心がけてください。

行動についての質問と仮定に基づく質問の違いを理解する

構造化面接の質問には、行動についての質問と仮説に基づく質問の 2 種類があります。行動についての質問では、以前の業績についての説明を応募者に求め、現在の職務で求められるものと照らし合わせます「~のときのことを話してください」)。仮定に基づく質問では、職務に関連した仮定の状況が提示されます「もし~だとしたら、あなたはどうしますか?」)。たとえば、面接では次のような質問があります。

  • 行動についての質問: あなたの行動がチームに良い影響を与えたときのことを話してください(フォローアップ: あなたの第一目標は何でしたか、その目標を立てたのはなぜですか?同僚はどのように反応しましたか?今後はどのような計画がありますか?)
  • 仮説に基づく質問: メールサービスを提供する業務を行なっている際、競合他社が、自社サービスに月額 5 ドルの課金を始めたとします。あなたは、その状況をどのように評価し、チームに何をするようにすすめますか?(フォローアップ: 推奨案を伝える前にどのような要因を考慮しますか?推奨案のメリットとデメリットは何ですか?それが今後も持続可能なモデルかどうか、どのようにして評価しますか?組織全体にはどのような影響があるでしょうか?)。

行動についての質問は、応募者が過去の状況にどのように対処したかを検証するために使用します。また、仮説に基づく質問は、将来の状況への対応を評価するために使用します。行動についての質問は、行動のパターンを明らかにするうえで有効であり、仮説に基づく質問は、応募者が新しい状況にどのように対応するかを確認できます。

難問奇問を避ける

かつて Google では面接の際、「ボーイング 747 の中にゴルフボールはいくつ収まりますか?」といった難問や、「もしあなたが 5 セント硬貨と同じ大きさに縮んで、ミキサーに入れられたとしたら、どうやって脱出しますか?」といった奇問を出題していました。

しかしそれと同時に Google では、面接時のスコアとそれ以降のパフォーマンス スコアを比較し、難問奇問による予測能力を詳しく検証しました。その結果、このような質問に対して見られた能力は、好意的に解釈しても、訓練を通じて向上できるようなスキルであることを発見し、それからは応募者の評価に利用することはなくなりました。こうした難問奇問は最悪の場合、些末な情報または応募者側の深い洞察がないと解くことができず、その一方で面接担当者を利口になった気にさせ、自己満足させるのみで終わってしまいます。このような質問には、応募者が仕事でどのような業績を示すのかを予測することはほとんどできません。その理由の 1 つは、質問が的外れであるからであり(日々の仕事で飛行機の容積を見積もらなければならないことがあるでしょうか)、もう 1 つは一般的な認知能力と、難問奇問を解くための能力との間に相関関係がないからです。

ルーブリック(評価基準表)を使用する

構造化面接では、質問に対する回答の評価基準を設定することで、複数の応募者の回答を公平かつ一貫性のある方法で比較し、評価することができます。

Google では、応募者の資質や応募要件のフィットを探る面接での質問に対して、悪い回答、あいまいな回答、良い回答、優れた回答はどのようなものかを、実例を交えて文書化しています。
面接担当者には回答を詳細にメモしてもらいます。そうすることで、独立した採用委員会面接担当者の評価を検討し、検証することができます。

カスタマイズ

Google で行われている面接の評価基準例