分析の結果、給与格差が見つからなければ、現時点で何か対処する必要はありません。次回の給与改定時に再検証し、格差のない給与体系を維持してください。
格差が見つかった場合は、以下の方法でさらに詳しく検証する必要があります。
弁護士に相談する。具体的に対処する前に弁護士に相談し、変更を行うための法的な文脈や要件を把握してください。
人事プロセスを確認する。定期的に確認を行い、格差が見つかったらその原因を調べます。人事プロセスが、意図したとおりに機能しているかどうかも確認してください。たとえば業績評価の客観性に確信が持てない場合は、特定の変数を含めた分析と含めない分析を実施して、業績評価や昇進に偏りがないかを確認します。人事プロセス内のすべての意思決定にも着目します。誰がどの意思決定の責任を負っているのか。意思決定に関わるトレーニング、規範、動機付けが、人々の決定にどう影響しているか。驚くような結果が出るかもしれません。たとえば、2010 年に Google が実施した分析では、昇進の機会に自ら手を挙げる女性エンジニアの割合が低いという事実が判明しました。それが原因で、男女間の昇進率に大きな差が生じていたのです。
Google では、結果に基づいて対処しました。このデータを社員に公開し、昇進の準備が整ったら積極的に手を挙げるよう促すだけでなく、査定を行ったマネージャーにも説明責任を求めることにした結果、昇進率の格差是正につながりました。
人事プロセスと同時に、給与決定プロセスを見直す良い機会でもあります。以下のような点を検討してください。
- 定義した報酬理念が、意図に反して不平等の原因になっていないか?
- 組織として、一貫性をもって給与体系を適用できているか?
- 分析前に設定した前提が、分析結果にどう影響しているか?
- 給与に影響するはずの要因(制御変数)によって説明できる不平等はないか?
給与の調整を検討する。報酬理念に沿って変更することが重要です。格差が存在すべきでないグループ間に格差が生じていた場合は、1 回限りの給与調整を検討してください。たとえば、2015 年に男女間の給与格差を特定したソフトウェア会社 Salesforce は、調整により格差の是正に取り組みました。ただし、分析直後の調整で達成できるのは短期的な平等です。根本的な原因を究明して解決するとともに、時間が経過しても元の不平等な状態に戻らないようにすることが重要です。
意思決定者に説明責任を求めることで偏見を減らす。ほとんどの組織では、給与平等に向けた取り組みで大きな役割を果たすのが、業績の評価や給与の決定において大きな責任を担っているマネージャーです。まずは、男女間の給与平等の重要性についてマネージャーを教育し、無意識の偏見が給与決定プロセスにどう影響するかについて説明します。給与改定の時期が来るたびに、男女間の給与平等の重要性をマネージャーに再認識させ、彼らによる給与査定の適正性が審査されること、審査の結果が後日フィードバックされることを伝えます。男女別の給与データを定期的に検証する委員会を設置している組織もあります。
男女間の給与平等を実現するには、組織内の全員が長期にわたって真摯に取り組む必要があります。簡単なスプレッドシートから始めてもよいですし、最初から全社的な報酬分析を実施するのもよいでしょう。すべての組織にはその規模にかかわらず、公平で平等な職場を作る責任があるということを心に留めておいてください。